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ジャニーズ解体的出直しに「吉本興業元会長」招聘を提案する【ガバナンス時評#4】

スポンサー企業「ジャニーズ離れ」の必然

#3から続く)これまでの3回は、私のガバナンスに関する考え方をお伝えしてきたが、今回の#4からは、連載タイトルにある通り、時々の事象を取り上げた「時評」を展開していきたい。まずは、私自身、多くのメディアで見解を表明してきた「ジャニーズ事務所問題」についてである。

さる9月7日に行われたジャニーズ事務所の記者会見を機に、スポンサー企業の「ジャニーズタレント離れ」が進んでいる。

それまで噂レベルに過ぎなかったジャニーズ事務所の創業者、ジャニーズ喜多川氏の所属タレントに対する性加害の問題を「外部専門家による再発防止特別チーム」が明らかにし、事務所がそれを事実として受け止め、会見を開いた。各企業の判断は、特別チームによる事実認定だけでなく、会見内容を受けてのものである。

会見で、ジャニーズ事務所は事務所名を変更せず、代表取締役社長でジャニー喜多川氏の姪でもあるジュリー藤島氏が社長を退任し、所属タレントの一人だった東山紀之氏が社長に就任すると発表。体制刷新をアピールしたが、それに対する企業側の答えこそが「タレントとの契約更新ナシ、新規契約見合わせ」だったことになる。

なお、その後、一転して東山氏が社名変更を決断し10月2日に新社名を発表するとしているようだが、看板の付け替えだけでは大勢に変わりはないであろう。

創業者に可愛がられ、13歳から43年にわたり事務所に所属した東山氏の社長就任を、企業側は評価しなかったと言い換えてもいいだろう。彼自身が何らかの罪を犯したわけではないが、創業一族の一員、いわゆる“ファミリー”に等しい東山氏では、彼が口にした「解体的出直し」は達成され得ないだろう、というのが大方の見方、ということだ。私の見解も全く同様である。

ジュリー氏は自らが株式を持ち続けると明らかにしたが、これについて、「被害者に対する救済措置をしやすくするためである」とその理由を会見で説明していた。確かに、被害者救済の面ではそうであろう。彼女に賠償財源となる会社資産を持って逃げられては困るため、ジュリー氏が何らかの形で事務所に残り、被害者救済という“敗戦処理”を行うのは当然である。そういう意味では、「代表取締役」として残留することは頷ける。

しかし、今後も活動を続けるタレントの所属先は、ジャニーズ事務所とは分割すべきであった。タレントが営業活動を行って収入を得る事務所と、創業者が犯した罪の被害者救済を行う事務所が同一では、どんな企業も所属タレントには仕事を依頼しないだろう。

特にCMなど、企業や商品イメージとタレントのイメージが一体となるケースではそうである。いくらタレント自身に罪はなくても、事務所のイメージが付きまとうからだ。しかも、所属タレントを使ったことで支払われる対価が、不当なことを行っていた事務所に支払われることを良しとする企業はない。

そうした点を考慮したのか、ジャニーズ事務所は後日、「今後1年間、広告出演並びに番組出演等で頂く出演料は全てタレント本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は頂きません」と声明を出した。

しかし、こうした子供だましの便法では誰も納得しないであろう。というのも、今後1年間という期間が何を意味するのか、1年経てば、免罪符が与えられるとでも考えているのか、ジャニーズ事務所が現在置かれている危機的状況について、全く理解が及んでいないことを露呈したものと言える。やるべきことは、事務所の体制を根本から変革すること、さらには、所属のタレントがジャニーズ事務所とは無縁の関係を築いて活動を続けられるよう、別会社として、新組織体制を早急に構築することなのである。

関係者すべてに「人権デューデリジェンス」を い…
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