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PBR対応策発表の場「コーポレートガバナンス報告書」とは?【株価とガバナンス】

コンプライ・オア・エクスプレイン

このうち、一番多くのページ数を割いて記載されているのが、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況で、その元になっているコーポレートガバナンス・コードには、まず5つの「基本原則」があり、各基本原則の下に「原則」があって、さらにその下には「補充原則」がある。2回の改訂を経て、5つの基本原則、31の原則、47の補充原則という構成になっている。

例えば、基本原則1番目の「株主の権利・平等性の確保」の下には、「株主の権利の確保」や「株主総会における権利行使」といった合計7つの原則があり、1番目の原則の下には3つの補助原則が置かれている。

CG報告書には、各コードのうち、コンプライしていないものと、コンプライしていない理由、コンプライしているものについては、一つひとつについての具体的な実施状況もしくは実施しない理由を記載する。

今回東証が求めている事項は、基本原則5の「株主との対話」の中の2番目の原則である「経営戦略や経営計画の策定・公表」の下にある補充原則「上場会社は、経営戦略等の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況について分かりやすく示すべきである」(原則5-2①)への対応状況として記載される。

1月15日終値で時価総額2位のソニーグループのCG報告書(最終更新日2023年12月21日)の場合、(I)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報→1.基本的な考え方→1.2.経営方針等→(1)経営の基本方針の下に【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】という項目を設けて、説明している。CG報告書のPDF版1ページ目の真ん中より少し下という配置である。

自社HPへの掲載は各社まちまち

それでは、投資家をはじめ社外の人間はCG報告書をどうすれば閲覧できるのか。自社HP(ホームページ)の「IRライブラリー」のコーナーに掲載している会社もあるが、掲載していない会社も多い。

自社HPに掲載していない会社でも、日本取引所グループ(JPX)のサイトに行けば、閲覧することができる。JPXのトップページの左端にあるメニューバーの中から上から3つ目の《上場会社情報》を選び、その中の《コーポレート・ガバナンス情報サービス》を選択。遷移したページの《コーポレート・ガバナンス情報サービス》という赤いボタンが現れたら、それをクリックすると検索画面が現れる。

参考URL 
日本取引所グループ(JPX)「コーポレート・ガバナンス情報サービス」ページ
https://www.jpx.co.jp/listing/cg-search/index.html

検索項目は多岐にわたるが、社名を入れればその会社のものが出てくる。また、検索項目にある会社の属性(市場区分や業種ほか)や組織形態、支配株主の有無など、さまざまな条件で抽出し、リスト化することもできる。

コードの全ての項目にコンプライしていても自社HPには掲載していない会社もあるのだが、コンプライしていない項目がある会社はHPに掲載しない傾向が見られる。有名どころで言えば、すべての項目にコンプライしているトヨタ自動車は自社HPに掲載しているが、コンプライしていない項目があるキヤノンはHPに掲載していない。

かつては適時開示や決算短信ですら直近のものしか掲載せず、頑強に株主との対話を拒絶していたキーエンスのHPは、今では大きく変貌し、かなり充実しているものの、CG報告書は掲載していない。ただ、意外にもコンプライしていない項目はたった1項目。TOB(株式公開買い付け)価格が安すぎて投資家をバカにしていると批判に晒されている大正製薬ホールディングスも、コンプライしていない項目は意外にもわずか2項目にとどまる。

ちなみに、上記4社のいずれも、1月15日の東証発表の対応済みリストにその社名はなかった。

次記事:PBRワースト企業「対応策」開示状況リスト

昨年3月末に東京証券取引所が《資本コストや株価を意識した経…
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