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粉飾、社長の女性問題…「内部通報」で暴かれた企業不祥事2023

パスコ 新任部長が通報した「利益先送りの不適切会計」

セコム傘下の航空測量大手、パスコが不祥事を公表したのは2023年2月7日のこと。担当部長から社長に不正の疑いがある旨の報告があったことが発端だった。

同社では22年12月に業務監査部長の交代があり、後任の業務監査部長が前任から引き継いだ資料の中に、売り上げを来期に繰り越すことで利益を先送りするという不適切な会計処理がされていたことを発見。同月30日付で社内調査員会が発足した。

社内調査委員会の調査で、21年3月期に計上されるべき営業利益を翌22年3月期に、22年3月期計上されるべき利益を23年3月期に繰り延べていることが判明した。社内調査委員会は他部署でも同様の会計処理が行われていないかを確認するため外部有識者による特別調査委員会を2月に立ち上げた。

23年4月に公表された特別調査委の報告書によると、同委員会による社内アンケートやヒアリング等によって、他の部署でも同様の不適切な繰り越し案件が行われていたことが発覚した。

不祥事の背景は、①不適切処理が担当者のパソコンで容易にできたこと、②利益の先送りは現場任せになっていた、③同社の業務監査部門が不適切な案件の繰越しをリスクとして認識していなかった――このような環境が積み重なったとしている。ただ、根底には本社からの強い業績プレッシャーがあったとし、従業員のコンプライアンス意識や規範意識だけの問題だけでなく経営陣の意識にも問題があったと指摘している。

ダイハツ「海外市場向け車両8万台で衝突試験不正」

ダイハツ工業は2023年4月28日、同月に内部通報という形で現場から不正の申告があったことを公表。5月15日に第三者委員会を設置して真相究明をすると発表した。

内部通報を受けて社内で確認を行ったところ、ダイハツが開発を行った海外市場向けの4車種の側面追突試験において、認証する車両の前席ドア内張り部品の内部を不正に加工し、試験の手順と方法を違反していたというもの。出荷した8万8123台が不正の対象車両だった(【2月26日追記】会社側は2023年4月28日、同月の内部通報を契機に不正行為を確認した旨を公表していたが、のちの第三者委員会の調査報告書によると、〈これはダイハツの内部通報制度に寄せられた内部通報を意味するものではなく、ダイハツの内部者から外部機関に対する通報があり、ダイハツは、当該外部機関からの指摘により不正行為の疑いを把握した〉としている)。

第三者委員会が23年12月20日に公表した報告書では、不正の原因を①過度にタイトで硬直的な開発による極度のプレッシャー、②現場任せで管理職が関与しない態勢、④法規の不十分な理解、⑤現場担当者のコンプライアンス意識の希薄化、認証試験の軽視の5点が挙げられたほか、不正対応の措置を講ずることなく短期での開発を推進した経営の問題も指摘された。

さらには、ダイハツ開発部門の組織風土として「自分や自工程さえよければよく、他人がどうあっても構わない」という自己中心的な風潮が蔓延。結果、認証試験の担当者に対するプレッシャーや部門のブラックボックス化を促進し、リスク情報の経営層への伝達を滞らせる土壌となったとしている。そして第三者委は、この組織風土こそが問題の真因の最も大きなもので、ダイハツの「社風」として深く根付いている可能性があると結論づけた。

なお、消費者庁は24年1月、ダイハツに対して内部通報制度の見直しなどを求める行政指導を行っている。

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